ますいい建築圏 Tomoe Whollys(トモエ・ホリーズ)さんへの質問で

Tomoe Whollys(トモエ・ホリーズ)さんへの質問です

1989年から10年間の会社員生活ののち、ヨーロッパの鍛冶屋さんに憧れて、金属加工と鍛冶技術を学ぶ。当初はWhollys(ホリーズ)の屋号で受注制作をしていたが、現在は、自分にとっての鉄の魅力と特徴である「溶ける」「歪む」「錆びる」を生かすような創作活動を展開している。
http://www.tomoenakazawa.com

■質問
わたしは「鉄」という、こ の、なぜか宇宙や地球の地中や人間の体内(血液)に存在する、ある意味ひじょうに謎のマテリアルになぜか強く惹かれております。(その強度ゆえに)建築構 造物として見るよりは、わたしの中では水、空気、土、植物、木、気、石、ガラスetc. 同様に「自然 Nature」の構成要因と感じております/鐵を単なる素材としてではなく自然界に存在する元素として・・・

以前に書いていただいた考え方にとてもひかれました
この考えと今回の作品づくりをどのように結びつけられているか、お教えいただいてもよろしいでしょうか?

■お答え
わたしは、自分でもなぜかわかりませんが、鉄という(素材と呼ぶよりは)物質に強く惹かれております。誤解を恐れずに言うならば、モノ作りをしたくて素材としての鉄を選んだというよりは、鉄という物質をいじりたくてモノ作りをしているところがあります。そんなわたしにとっての鉄の魅力は、硬い、柔らかい、歪む、溶ける、錆びる、です。鉄をいじっていて、ぼんやりと気づき始めたのは、鉄というものはこの地球の始まり、あるいは宇宙の始まりから存在している物資だろうということです。そして、生き物である我々の体(血液)の中にも存在しており、あらゆる生物、植物の存在にも欠かせないものだろうということです。このような物質を自然の中から取り出し、製錬して、人々は昔からたくさんのものを生み出してきました。「鉄」が「鉄」のまま形を変えていろいろなものになり得るということを、とても面白いと感じます。わたしは、この「鉄」を使って、何を作ろうかなぁと考えます。何か、身の回りに置いて気持ちの良いもの、心地の良いものを作れたらいいなぁと思います。さらに、この世界(自然界といってよいと思いますが)に存在しながら、直接わたしたちの目には見えない何かを形作れたら素敵だなぁと思います。自然界には、わたしたちの目には見えないものがたくさん存在します。音、風、空気、振動、静寂、匂い、(ある領域の)色彩、電気的なものetc…. 自然界に存在する鉄という物質によって(わたしなりに)視覚化されたそれらが、(良い意味で)わたしたちの心に何かしらの影響を与えたらいいなぁとも思います。そういった意味で、今回は、わたしたちの(非日常ではなく)日常である住空間に存在しても違和感のない何かを作りたいと思いました。ちょっと意味は逸れますが、教会が、石(石柱)によって森をその内部に持ち込んだように、わたしも「自然」の一部として鉄を住空間の中に持ち込めたらいいなぁと思いながら制作をしました。余談ですが、鉄もまた生きて呼吸をしてい(るように感じ)ます。酸化し時間とともにどんどん表情を変えてゆきます。今回は限られた展示期間なので、ここまでは感じていただくことはできませんが、この部分もわたしにとっては鉄の大きな魅力の1つです。